「フォーエバーケミカルについて」
SID事業部 アドバイザーの井ノ瀬です。
メルマガより少し先の情報について「#Circular Economy(循環型経済)」をテーマに発信していきます。
「フォーエバーケミカル(Forever Chemicals)」が改めて注目されています。
2018年ごろにアメリカの環境保護団体(Environmental Working Groupなど)がPFAS(ピーファス:有機フッ素化合物)を「Forever Chemicals」と呼び始め、報道や政策提言で使われるようになりました。
PFASは「魔法の分子」と呼ばれるほど、耐久性・安定性・撥水性に優れていて、代替が難しかったこともあり、さまざまな製品や産業で使われてきました。身近なものでは、撥水加工の衣類や消火剤などがあります。
しかし、その環境残留性と人体への悪影響が明らかになってきたことで、使用制限や代替技術の開発が進んでいます。
さてこのPFAS、最近、目にしたことがある方々が多いのではないでしょうか?
2025年6月、環境省は水道法上の「水質基準」にPFOSおよびPFOAに係る基準値(合計値50ng/L)を追加する環境省令を公布
PFASのうち古くから使われてきた「PFOS」「PFOA」は2009年以降、国際条約で製造・使用・輸入が禁止されています。
しかし、それまでに工場から排水されたPFASは、河川や地下水に流れ込み残留し、雨水からも検出されています。また、廃棄により土壌汚染も深刻化しています。それらは自然界でほとんど分解されることなく長く水環境や土壌、大気に残り井戸水や川から取水した水道水を通じて、体の中に取り込まれています。
そのため、環境省は今年6月に水質基準を公表しました。
それと同時に水道事業者(自治体の水道局)等が水道水中の基準値※を超えないよう取り組みを進めています
※毎日2リットルを一生飲み続けても健康への悪影響が生じないと考えられるレベル
日本や世界で懸念されている化学物質の環境への影響
環境への悪影響が指摘されている化学物質はPFASだけではありません。
ダイオキシン類や、環境ホルモン、重金属は人体への悪影響が強く、知っている方々も多いかと思います。
そのほかにも今年2月から規制されたのは、耐熱性が高く工業部品で使われていたデクロランプラス、農業用殺虫剤に使われていたメトキシクロル、紫外線吸収剤のUV-328などです。
規制の理由は「難分解性」「生物蓄積性」「毒性」「長距離移動性」の高さです。
こうした物質は、便利だから、代替が難しいからとそのリスクが軽視され多くの場面で使われていきました。
POPs(Persistent Organic Pollutants)への対策と世界的取り組み
「難分解性」「生物蓄積性」「毒性」「長距離移動性」の4つの特性をもつ化学物質は「POPs(ポップス)」と総称されています。
このうち特定の有害な化学物質の使用や排出を制限・廃絶することを目的として2001年に国際条約「POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)」が採択されました。日本は2002年8月に加盟しています。
日本の化学物質に関する取り組みは、2025年3月に経済産業省が公表した
「化学物質管理政策をめぐる最近の動向」
(www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/chemicals/pdf/002_03_00.pdf)に詳細がまとめられています。
私たちが実生活で出来ることは、「POPsに関する正しい知識を得ること※」「POPsが使われている製品を買わないこと」「規制対象の物質が含まれる製品を適切に廃棄すること」です。目に見えないものだからこそ、正しく知って環境と人体に取り込まないことが大切ですね。
※環境省「POPsパンフレット」(www.env.go.jp/chemi/pops/pamph/index.html